Datachain、三菱UFJ信託銀行と技術提携を開始。ステーブルコイン基盤「Progmat Coin」を用いたデジタル証券のクロスチェーン決済において2024年までの商用化を目指す

September 29, 2022

株式会社Datachain(以下、Datachain)は、三菱UFJ信託銀行株式会社(以下、三菱UFJ信託銀行)と、ステーブルコインの発行・管理基盤「Progmat Coin(プログマコイン)」を用いたデジタル証券のクロスチェーン決済の実現に向け、技術提携を開始しました。三菱UFJ信託銀行が2022年4月に設置した資金決済WGのクロスチェーンRTGS分科会における議論を元に、Progmat Coin上で発行されたステーブルコインを用いた、異なるブロックチェーン基盤上のデジタル証券のDVP決済の商用化を目指し、技術検証を行ってまいります。

なお、本取り組みで扱う法定通貨担保型のステーブルコイン(*1)を用いたデジタル証券のDVP決済は、世界的にも新規性が高く先進的な取り組みです。Progmat上のDVP決済は2023年に商用化予定ですが、異なるブロックチェーン基盤間のクロスチェーン決済についても、今回の実証実験を皮切りに2024年までの商用化を目指してまいります。

これまでの取り組み

Datachainは、三菱UFJ信託銀行と共に、ステーブルコインの発行・管理基盤である「Progmat Coin」の提供を目指して設置された資金決済WG内のクロスチェーンRTGS分科会において、2022年4月より、Progmat Coin上で発行されたステーブルコインを用いたクロスチェーン決済手法についての議論を本格的に開始しました。

同分科会では、パブリックチェーンを含む多様なブロックチェーン基盤上のデジタル証券等のデジタルアセットに対して、Progmat Coinで発行されたステーブルコインを用いて、いかに安全性・効率性・拡張性に優れた決済を実現するかを中心に検討を行いました。

半年に及ぶ検討の結果、パブリックブロックチェーンにおいて40以上のブロックチェーンの相互接続を実現し安定稼働の実績がある通信プロトコルIBC、IBCをエンタープライズブロックチェーンを含む様々なブロックチェーンで活用可能にするHyperledger LabsプロジェクトYUIの活用を主案とすることを決定しました。さらに、効率性・拡張性に優れたブロックチェーン間の相互接続を実現するミドルウェアであるLCPの活用を主案とすることについても、同時に決定しました。

2024年の商用化に向けて、上記の方式の技術的検証を段階的に行ってまいります。以下では、第一弾の実証実験についてご紹介します。

◆「Progmat Coin」について
https://www.tr.mufg.jp/ippan/pdf/progmat_coin.pdf

◆資金決済WG クロスチェーンRTGS分科会|中間報告書
https://www.tr.mufg.jp/ippan/pdf/st-sc-rtgs_report.pdf

実証実験概要 / 検証内容

今回の実証実験では、デジタル証券に対するステーブルコインによるクロスチェーン決済を想定しています。Progmat Coin基盤のブロックチェーン層であるCordaと、デジタル証券を扱うブロックチェーン基盤を想定したQuorumを相互接続し、両ブロックチェーン上のトークンの同時移転を検証します。

検証ポイントは2点あります。
1点目は、拡張性の高いトラストレスなブロックチェーン間相互認証が可能かどうかの検証です。これを実現するための技術として、ブロックチェーン間の通信プロトコルIBC、IBCを様々なブロックチェーンで活用可能にするYUI、安全性に加えて効率性・拡張性に優れたブロックチェーン間の相互接続を可能にするミドルウェアLCPを用います。

◆ IBCについて(図中のRelayerについての説明も含む)
https://medium.com/@datachain_jp/how-cosmos-ibc-works-to-achieve-interoperability-between-blockchains-dfaea0f4d935

◆ YUIについて
https://github.com/hyperledger-labs/yui-docs  

◆ LCPについて
https://medium.com/@datachain_jp/introduction-to-lcp-aa78dc04d4d3  

2点目は、異なるブロックチェーン基盤上におけるトークンの同時移転の検証です。異なるブロックチェーン基盤上のデジタルアセットとステーブルコインでDVP決済を実行するためには、双方のブロックチェーン上の取引を同時に(アトミックに)実行し、双方のトークンを同時に移転させる必要があります。このようなアトミックなトークン移転を実現するためのミドルウェアとしてCross Frameworkを用います。

◆ Cross Frameworkについて
https://medium.com/@datachain_jp/cross-framework-introduction-88dc87f8fcb7  

今後の方針

本プレスリリースで発表した実証実験を、2023年3月までを目処に行った後、本スキームの商用化に向けて段階的に検証を行ってまいります。具体的には、次フェーズとして、Progmat Coinや実際のデジタル証券基盤の検証環境を用いた検証、PTS(*2)からの出来通知を元にした検証を2023年末までに実施予定です。そして、これらの検証を元に、2024年までの商用化を目指します。また、本検証ではデジタル証券を対象にしたDVP決済を主要ユースケースとして扱っていますが、今後、パブリックチェーン上のNFT(*3)等の多様なデジタルアセットの決済への応用についても検討してまいります。

三菱UFJ信託銀行 デジタルアセット事業室 プロダクトマネージャー 齊藤達哉様より

ブロックチェーンに関する言説は様々ですが、3つの確かな事実があります。
1) ブロックチェーン(分散型台帳技術一般を含む)のいわゆる“Layer1”について、 BitcoinやEthereum以外にも様々なプロジェクトが勃興していること
2)国内だけでも、デジタル証券案件の規模は既に400億円(うちProgmat関連は300億円弱)を突破していること
3)2023年にデジタル証券の2次流通市場が本格的に立ち上がるが、「ブロックチェーン上で完結する安定的な資金決済手段」が無ければ、市場の効率性は著しく損なわれること
以上の3つの事実を踏まえると、「ブロックチェーン基盤の違い」に囚われず、「大量のデジタル証券の決済に利用可能」な、「ステーブルコイン」の存在は不可欠といえます。
更に視野を拡げると、いわゆるNFTの分野に参入するプレーヤーが拡大の一途を辿っていますが、なぜNFTか?の意義を考えると、“世界市場×パーミッションレスブロックチェーン”上のプロジェクトが前提と捉えています。“世界市場×パーミッションレスブロックチェーン”上のNFT取引において、円貨やクレジットカードでの決済は、多くの事業者/プロジェクト参加者の負担が発生しています。他方、「ブロックチェーン上で完結するが、“価値が不安定”な資金決済手段」である暗号資産の決済利用も、特に事業者にとって課題が存在することも事実です。
したがい、デジタル証券のみならず、NFT取引市場においても、「ブロックチェーン上で完結する安定的な資金決済手段」が強く求められていると認識しています。
幸い、日本は世界に先駆けて、上記のような存在を「電子決済手段」として法律上の取扱いを明確化しました。本取り組みにより、技術面でも「ブロックチェーン基盤の違い」に囚われないことを実証し、「Progmat Coin」基盤が様々なユースケースの課題を解決できることを証明できればと考えています。

*1  ステーブルコイン: ブロックチェーン等の電子情報処理組織を用いて移転することができる、法定通貨と価値の連動等を目指す決済手段の総称

*2  PTS: 証券取引所を介さずデジタル証券を売買できる私設取引システム(Proprietary Trading System)

*3  NFT: ブロックチェーン等の電子情報処理組織を用いて移転することができる、一意で代替不可能なデータの総称(Non Fungible Token)